[報告]

日米軍事再編・基地強化と闘う全国連絡会
第五回総会




 全国の反基地闘争を担う市民が、年に1回のペースで集まり、各地の状況や経験を報告しあう目的で、2006年2月に沖縄で結成された日米軍事再編・基地強化と闘う全国連絡会は、今年9月23日、岩国において第5回総会を開催した。翌日の米軍基地環境シンポジウムとの抱き合わせ開催となったこともあり、韓国で米軍基地に対して闘う市民団体の代表もオブザーバ参加し、会場となった「山口・岩国爆音訴訟の会」事務所に入りきらないほどの参加者となった。
 当日の午前中にフィールドワークも企画されたこともあり、総会は3時間という制約の中で行われたが、各地の報告と、今後の進め方についての確認を行い、最後に総会宣言を採択した。
 また、夜の交流会でも、お互いの運動や情報の交換を行い、中身の濃い1日となった。

 総会は共同代表の安次富浩さん(辺野古・ヘリ基地反対協)の挨拶で始まり、各地の闘い・活動報告が続いた。特に、6月の日米安保協議(2プラス2)で、馬毛島に空母艦載機離発着訓練施設建設が明記されるなかで、鹿児島(種子島)の代表から報告がなされ、現地の状況や今後の方針について聞くことができた。
他に、沖縄、佐世保、岩国、神奈川、横田からも報告があった。

 以下に、安次富浩共同代表の挨拶と、韓国からオブザーバ参加いただいた平澤平和センターの姜相源(カン・サンオン)氏の挨拶を紹介する。

<安次富浩共同代表>
 米軍再編、とりわけ沖縄問題が中心となってきたが、実際には神奈川や、今回、新たに馬毛島を艦載機の訓練施設にしようとする日米共同声明が6月21日に発表されたといったこともある。いま、アメリカ議会の流れが変わってきている。財政破綻が問題になっている。米軍再編の完全実施が財政的にあやしくなってきている。私たち住民運動の力で軍事基地の強化を止めることができるようになってきていると思う。野田新政権は、菅政権の流れを踏襲すると言っているが、3月11日の大震災・原発事故後に軍事基地の拡張が許されるのか。むしろ思いやり予算を被災地に回すことを求める運動が必要である。いま、仲井真知事が訪米して危険な普天間基地を県外にと訴えている。これからは私たちがアメリカ政府に沖縄の声、あるいは日本の声を強く訴えていくよい機会が生まれつつあると思う。そういう意味で全国各地の反基地住民運動の成果を出し合って、これからどう闘っていくかをそれぞれの地域の問題を考えながら一緒に運動していきたい。

 <韓国・平澤(ピョンテク)平和センター 姜相源(カン・サンオン)氏>
 いま、駐韓米軍、在日米軍、韓国軍、自衛隊の動きが目立っている。日米韓の統合訓練が行われている。日米韓の軍事的覇権を確立しようとしている。私たちは連帯して、このような動きを砕いていかなければならないと思う。韓国では駐韓米軍の環境汚染、基地強化などであわただしさを増している。そうした韓国の状況も含めて、反基地住民運動は、それぞれの国で別々に闘われるものではなく、連携して闘う必要がある。これら三つの地域の運動がどのようにして連帯の輪を広げていったらよいかが課題である。このことを訴えたい。  

総会宣言はこちら


全国連総会(9月23日)のようす


[報告]

第4回 沖縄・韓国・日本
 米軍基地環境シンポジウム

「どうなっているの?米軍再編」
~東北アジアの米軍基地と環境問題を考える~



 9月24日、第4回沖韓日・米軍基地環境シンポジウムが、岩国市民会館で開催された。今回は、サブテーマとして「どうなっているの?米軍再編」~東北アジアの米軍基地と環境問題を考える~ が掲げられ、駐留米軍基地に対して活動する全国の代表、韓国の代表、地元の市民など約130人が参加した。

このシンポジウムは、第1回が2005年3月に沖縄で開催され、日本・沖縄・韓国の米軍基地を抱える地元が連携し、闘いを前進させる目的で継続して開催されており、今年はその4回目となった。今回は、第1部が各地域からの報告、第2部がパネルディスカッションであった。

 第1部は、地元岩国から始まり、沖縄、神奈川、韓国、横田、佐世保、鹿児島からの報告がなされた。
 岩国からは、「米軍住宅建設など全体で900億円を見込む愛宕山再開発が計画されている。今年度予算200億円の執行は延期させたが、県知事が12月末までに判断しようとしている。これを阻止するためにも岩国訴訟を含めて支援してほしい」と訴えがなされた。
 厚木からは、「米軍機の爆音は何の軽減もされていない。爆音と墜落の恐怖にさらされている。海上自衛隊の次期対潜哨戒機P-1は、機体にひび割れをおこすことが判明し、本格配備は延期となったが、厚木上空の試験飛行は継続している」と基地被害の実態を訴えた。
 座間は、「厚木基地の米軍ヘリがキャンプ座間で訓練を繰り返して爆音をまき散らしている。陸自中央即応集団司令部移駐の工事に伴う土壌調査では鉛汚染が検出されている」と報告した。
 横須賀からは「GWの改修時に放射性物質は外には出さないと約束しながら、実際には積み替えを行った。横須賀のある三浦半島は、活断層があり震度7以上の危険性が指摘されている」と報告した。辺野古、鹿児島県馬毛島、韓国での闘いの報告を以下に記す。

<辺野古(ヘリ基地反対協議会安次富浩共同代表)>
-辺野古移設は破たんしているが、6月末の2プラス2共同声明の問題点として、以下のことを指摘したい。

移設期限を明記しないことは普天間基地の固定化を謀っている。また、「辺野古アセス」範囲内での50m移動案を視野に入れている。下地島パイロット訓練飛行場をアジア太平洋地域の災害救援拠点として整備することに合意した。馬毛島が将来、米空母艦載機離発着訓練の恒久的施設に変貌する可能性が強い。
 「V字形合意は砂上の楼閣」を裏付けるアメリカ議会及び米軍の動向を注視している。7月に就任したパネッタ新国防長官は、海外に駐留する米軍の任務と役割、戦力の見直し、国防費の削減に着手するとの意向を示した。
 政府をチェックする国会の機能低下、政治の劣化を背景として、シビリアン・コントロールの弱体化が進んでいる。中国敵視政策は民主党の「対等の外交関係」、「東アジア共同体」構想の崩壊であり、歴代政権の対米隷従関係を引き継いだ。前原前外相は独自に訪米し、日米合意の推進を約束している。

-今後の展望として以下を提起したい。

沖縄県議会は6月14日、全会一致でオスプレイ配備反対を決議した。県民大会を開催し、知事、県議会、名護・宜野湾市長等が帯同で野田新政権に配備反対要請を行うべきだ。
 市民運動団体が訪米し、アメリカ市民運動と連携して連邦議会へのロビー活動、座り込みとデモ、国連本部への直訴を検討すべきだ。辺野古違法アセス訴訟を通じて、アセス調査の不備を突き、裁判に勝利する。政府は知事のもつ公有水面埋め立て権限を奪う特別立法を狙っている。大規模な県民大会を開催し、知事を支える大衆運動を構築することが必要である。

<馬毛島(鹿児島に米軍基地はいらない県民の会)>

2007年にFCLPの候補地と報道された。防衛省はこれまで、検討対象ではないと言ってきたが、今年5月に「検討対象」との報道があり、6月1日に防衛省に反対要請した。そのとき「検討している」との説明がなされた。  それから急遽反対運動を立ち上げた。6月21日の日米安全保障協議委員会の共同文書に、「馬毛島」が明記された。

 この間、1市3町では、「米軍基地等馬毛島移設反対協議会」を発足、要請活動、署名活動を行ってきた。住民組織は、西之表市を中心に「市民団体連絡会」を発足させ、9月1日には、「自然を守る会」が、国と県に工事の差し止めを求め、開発業者に工事中止と原状回復を求める訴訟を起こした。

一方、賛成派は、7月に「自衛隊訓練施設の推進を求める陳情書」を西之表市議会に提出(否決)。賛成の署名活動も行っている。防衛省は7月2日、1市3町への説明後、漁協、建設業などへ個別説明を行った。移設には250億円投入という金額を提示した。

今後の取り組みとして、住民への署名活動、街宣活動・立て看板設置、学習会の開催を計画し、住民への情宣に取り組む。11月以降に「断固反対大集会」を検討している。

<韓国・郡山 平和の風 タルギさん> 

①在韓米軍の環境犯罪―漆谷(チルゴク)郡のキャンプ・キャロル

5月19日、慶尚北道漆谷郡に存在するキャンプ・キャロルに枯葉剤を埋設したとの米退役軍人の証言が報道され、米韓共同調査団が5月27日から土壌を調査した。猛毒性の発がん物質であるTCEとPCEは基準値を超える量が検出されたが、ダイオキシンは検出されなかった。調査はずさんなものであったことが明らかになっているが、韓国政府は疑惑にふたをしようとしている。8月8日、平澤(ピョンテク)米軍基地周辺の調査で、ダイオキシンが検出されたとの発表がなされた。枯葉剤不法埋蔵が、単なる疑惑でなかったことが証明された。また、5月26日には、群山米軍基地で油流出事件が発生した。油流出事件は過去にも何回も起きている。

②米軍の環境事故は事故でなく「犯罪」

米軍から返還された全国の在韓米軍基地は、深刻な汚染状況にある。返還されずにずっと使われている部隊は、規模の大小を問わず環境汚染事故が日常的に起きている。米軍は環境汚染問題を日常的に隠蔽してきた。米韓駐屯軍地位協定(SOFA)では「施設及び区域に対する適切な出入は合同委員会で定められた手続きによって行われる」と明示され、韓国政府は措置を直ちに行うことができない。

③海軍基地阻止のための住民たちの壮絶な闘争―済州島江汀(カンジョン)村

済州海軍基地は2002年から推進され、2007年に江汀村が候補地になり、4年間闘いが続いている。2007年4月、村の住民1900人のうち、87人のみ参加した議会で米軍基地誘致を決議した。候補地の海は、天然記念物の軟珊瑚、絶滅危惧種のジムグリガエルや赤脚馬糞蟹をはじめとする多様な生物の生息地である。海軍は環境影響評価から意図的に保護生物の生息に関する情報を削除・歪曲している。また、済州で唯一「クロンビー」(一塊の溶岩の岩)が見られる場所でもある。海軍の基地建設はこの溶岩の岩と海をコンクリートで埋めようとしている。現在は、海の埋め立てのための測量作業とクロンビーを埋めるために事業敷地内にある住民の農地を奪い取っている。住民たちは身を挺して海上闘争を行った。9月2日の代執行でカンジョン村村長を含む7人が逮捕・拘留され、村長は未だに拘留されている。

第2部は、「米軍再編とどう闘っていくか?」と題されたパネルディスカッションが行われた。
パネリストとして、安次富浩(沖縄・辺野古)、新倉裕史(横須賀)、金子豊貴男(厚木)、田村順玄(岩国)の4氏が、話をした。

 田村氏は、自身が9月18日の海上自衛隊岩国航空基地祭で見学を拒否された「事件」について話した。これまでのリムピースなどの活動が、米軍や自衛隊にとって大きな圧力となっており、彼らが恐れていることが明らかになった。

 安次富氏は、昨年は名護で稲嶺市長を誕生させ、県知事選では仲井真知事が、県外移設を主張して再選された。沖縄では圧倒的多数が県外移設だ、と報告した。今、知事は訪米して、県外移設を訴えている。新基地建設を強行すれば、日米安保にも影響するとも言った。また、オスプレイ配備の問題もある。私たちも訪米し、ワシントンでデモをして訴えたい。国際社会にもこの怒りをぶつけたい。

 金子氏は、全国の米軍再編はうまくいっているところとそうでないところがあると指摘した。キャンプ座間では米第1軍団が移駐するといわれたが、前方司令部が設置され、少人数だ。一方で、陸自の中央即応集団司令部の移駐は進められている。また、岩国への米軍機移駐は、訓練施設が決まっていないため、進んでいない。米の財政危機も絡めて、米軍再編に反対していくことが必要である。

 新倉氏は、アンケート調査では「基地はやむを得ない」という人が多いが、僕らはこの人たちに展望をもっていると語った。賛成でやむを得ないという論理はあり得ない。ところが3月の大震災直後の調査では、基地があってもよいという人が多くなった。報道で米軍や自衛隊の“活躍”が取り上げられたことを反映していると考えられる。したがって、我々も、基地の危険や米軍の危険をもっと訴えていくことで、支持を得られると考えており、これからも続けていきたい。


 最後に、「沖縄、韓国、日本各地の基地を抱える街の住民が集まり、岩国をはじめとする各地で起こっていることがその場所だけのことではなく、大きな米軍の世界戦略のるつぼの中に置かれていることを改めて確認しました。そして、そこから抜け出すためには在日米軍だけではなく、在韓米軍の再編問題についても、私たちはつながりを強め、共に闘っていくネットワークを構築していかなければならないことを確認しました」などの集会アピールを採択し、団結ガンバロウで締めくくった。

集会アピールはこちら



パネルディスカッション

最後に団結ガンバロー