発行日:2018年5月11日
キャンプ座間への米陸軍第1軍団の移駐を
歓迎しない会ニュース No.71
電子版
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陸自中央即応集団(CRF)の廃止と
“日米共同部”のキャンプ座間
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3月末、キャンプ座間の「陸自中央即応集団司令部(CRF)」が廃止になり、陸上自衛隊は新たに「陸上総隊司令部」を朝霞駐屯地に発足させた。
そして、キャンプ座間には米軍との調整機関・「日米共同部」が20数名で発足、また第4施設群の増強として、御殿場・駒門駐屯地から第364施設中隊が移駐してきた。結果として、キャンプ座間の陸上自衛隊は490名で構成される。立派な庁舎と隊舎を作ったのに、2013年から5年の命だった。今後、庁舎には日米共同部が入り、隊舎には第4施設群が入る。
陸上総隊設立の背景
航空自衛隊は航空総隊(横田基地)、海上自衛隊は自衛艦隊(横須賀)を設置、空自と海自は有事の際に防衛大臣が統合幕僚長を通じて1人の司令官に命令を下せば、全国的な部隊展開が可能だ。一方、陸上自衛隊は最上級部隊として北部・東北・東部・中部・西部の各方面隊が並立しているため、防衛大臣は各方面隊を統括する5人の方面総監に個別に命令を下さなければならないという状況にあった。この問題を解消すべく、防衛省では陸自の部隊を一元的に運用する陸上総隊とそれを統括する陸上総隊司令官の設立を検討、2013年5月、自民党は新たな防衛計画大綱に関する提言に、陸上総隊の新設を盛り込む方針を固め同年12月に閣議決定、「一部の方面総監部の機能を見直し、陸上総隊を新編する。その際、中央即応集団を廃止し、その隷下部隊を陸上総隊に編入する。」とされた。
2015年5月、第3次安倍内閣は、2017年度を目処に数百人規模の司令部を朝霞駐屯地に設置することを決定。陸上総隊司令官は方面総監経験者のみに限られ、陸上幕僚長に次ぐ地位とした。
2017年5月、陸上総隊創設などの改正自衛隊法が成立。既存の中央即応集団は廃止され、2018年3月27日に朝霞に陸上総隊が設置された。
◇ 部隊編成 ◇
司令官、幕僚長は陸将、主要部長は陸将補(二)
陸上総隊司令部(司令部:朝霞駐屯地)
司令官(政令指定職5号:陸将)
幕僚長(政令指定職1号:陸将)
参事官(事務官) 総務部(総務、人事、会計各課)
情報部(情報第1課、情報第2課)
運用部(防衛、運用、国際協力、システム通信各課)
後方運用部(後方運用課、装備課)
日米共同部(座間駐屯地)
報道官 医務官 監察官 法務官 総隊司令部付隊
(歓迎しない会共同代表 金子豊貴男)
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3月末に陸上総隊が発足
日米ガイドラインによる日米軍事一体化が深化
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<陸上総隊への改編とは>
防衛白書(2017年度版)では、陸上総隊の新編により、「作戦基本部隊(各師団・旅団)などの迅速・柔軟な全国的運用」が可能となり、「現在、各方面隊が個別に実施している統幕、自衛艦隊司令部、航空総隊司令部及び在日米軍との間における平素から事態対処時までの運用などに係る調整を陸上総隊に一本化することで、(略)統合運用の実効性が向上」するなどと書かれています。
ジャーナリストで軍事評論家でもある前田哲男氏は、「世界」(2016年12月号)で、「二つの狙いがある」と書いています。
①従来、陸上幕僚長のもと、地域割拠・並立型であった「方面隊」を、統合幕僚長の指揮下の一元・直立型指揮系統に改組し、機動展開力向上をはかる。②それにより、米陸軍と堅固なカウンターパート関係をつくりあげ、統合運用—共同作戦・共同兵站—を可能にする。どちらも集団的自衛権容認、新ガイドライン「戦争法」によって初めて可能になった、<海外で戦う自衛隊>に向けた改革である。
<日米共同部>
前田氏は、特に「日米共同部」の創設に注目し、日米ガイドラインに書き込まれた「共同計画策定メカニズム*」が実地に移されたことを示すものと指摘しています。
*「日米両政府は、平時において、日本の平和及び安全に関する緊急事態について、各々の政府の関係機関を含む改良された共同計画策定メカニズムを通じ、共同計画の策定を行う」
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[報告]
2018.4.12
『ザ・思いやりパート2-希望と行動編』
上映会に120人…
『相模原・座間版』の同時上映も…
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4月12日、相模女子大学グリーンホール(旧グリーンホール相模大野)の多目的ホールで標記の上映会が行われた。主催は「第1軍団の移駐を歓迎しない会」。午後の部、夜の部の2回上映で、参加者は合わせて120名ほど。映画は取材、編集、効果も巧みで、当日入場料1000円も頷ける出来映え。さすがと思った。だから、もっと大勢の人に見てほしかった。
パート1の映像も折り込んでいるので、パート2だけを見ても、「思いやり予算」という外国の軍隊の駐留を大元で支える特異な仕組みがよく分かる。ご覧になっていない方、機会を見つけて、ぜひ見てほしい。
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映画「ザ・思いやり」パート2の上映時間は約90分
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主催者の要請もあり、今回も「ザ・思いやり/相模原・座間版」を同時上映した。と言っても、手持ちの写真を編集しただけの、音声もその場で解説するというもの。だから、2回目の方が1回目よりは上手く解説できた、という類いの作(コマ数は50)。
でも、前作にコマを補充するだけでも、結構骨が折れる。新しいコマ(写真)探しと再構成等々。キャンプ座間、米軍相模原住宅、相模総合補給廠の3つの陸軍基地で、「思いやり予算」によって、どんな施設がつくられ、基地がリニューアルされているのか…。20分ほどの上映時間に収めるのに結構、知恵も神経も使うのだ。
それらの施設にどれだけのお金が投じられているのか。平成25年度(2013年度)だけで、前出の3つの米軍基地に約160億円が投じられた。落札価格を一覧に示して分かりやすくしたつもりだが、水光熱費や労務費なども調べて示せれば、もっとよかった、まだまだ改訂の余地のあることが分かった。
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映画とともに「相模原・座間版」(スライド)の上映も行われた。(解説付き、約20分)
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2年前のパート1上映会の際は、映画のこと、「思いやり予算」のことについて、入場者からアンケートを募った。結構、いろいろな意見をあり、大いに参考になった。なのに、今回はうっかり忘れてしまった。次回作の手がかりになったかもしれないのに-大失敗、そして反省。
(沢田政司・相模補給廠監視団)
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会場ロビーには「相模原・座間版」のスライドをコピーして展示
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[報告]
2018.5.6
キャンプ座間フィールドワーク(春)
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歓迎しない会では、毎年、春と秋にキャンプ座間の周囲を巡るフィールドワークを行い、基地に変化などを観察しています。ここ数年、春のフィールドワークはゴールデンウィークに実施するようになっており、今年も最終日の5月6日に行いました。
今年は、3月末に陸上自衛隊の組織改編があり、中央即応集団(CRF)が廃止となったことで、キャンプ座間のCRF司令部も廃止、代わりに第4施設群の第364施設中隊がキャンプ座間に移駐してきました。
そうはいっても、見た目、大きな変化はないだろうと考えていたのですが、周ってみるとそれなりの変化があり、後に写真も載せますが、陸上自衛隊の改編をあらためて実感することになりました。
今回のコースは、大坂台公園→返還地→正面ゲート前→座間公園→新戸公園→基地内横断トンネル(市道新戸相武台線)で、典型的なフィールドワークのコースをたどりました。
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大坂台公園より基地方面を展望
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新築移転された座間市消防庁舎
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<座間市消防庁舎の新築移転>
2006年の日米ロードマップ合意によるキャンプ座間の一部返還地については、この春の座間市消防の庁舎新築移転をもって一連の工事が終わりました。返還といっても、自衛隊家族宿舎の建設だったり、消防庁舎の移転だったりと、市民が直接利用する施設としては座間総合病院が目玉施設として誘致されたくらいで、返還地が市民の多く集まる場所になったわけではありません。
一部返還地に新築された座間市消防庁舎の前を通り、キャンプ座間正面ゲート前に向かいましたが、これまで、ずっと続いていた工事が、これで一段落したという感じでした。
基地正面ゲート前を過ぎて、そのまま座間公園に上り、金子共同代表の説明を聞いたり、参加者の簡単な自己紹介を行ったりしました。
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<キャンプ座間の国連旗>
例によって基地内には、星条旗と日の丸、そして国連旗が掲げられているのですが、朝鮮半島の対話の進展によっては、朝鮮戦争が終結し、この国連旗が撤去される事態も予想されています。金子さんが、この国連旗は今回で見納めになるかもしれないといいましたが、あながちあり得ないことではないと思います。
キャンプ座間には、朝鮮戦争停戦後の1957年から朝鮮国連軍後方司令部が置かれていましたが、2007年に横田基地に移されました。しかしその後も、キャンプ座間は朝鮮国連軍の立ち寄り基地とされているのです。
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基地正面ゲート前を歩く参加者
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国連旗を含め三つの旗が掲げられている
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<自衛隊座間駐屯地>
座間公園から基地のフェンス沿いに北へ進んでいくと、陸上自衛隊の駐屯エリアになります。建物の間には、以前から第4施設群の車両が置いてあるのですが、今回は台数、種類も増えているようでした。
さらに進むと、これまでは樹木が生い茂って見通しが利かなかった場所が、伐採されて見通しが利くようにされており、新しく整備されたと思われる駐車場には、クレーンなどの重機が置かれていました。
これらの整備が、陸上自衛隊の改編と関連しているかどうかは確認できていませんが、明らかに従来とは異なる光景ですから、第364施設中隊の移駐によるものと考えるのが自然です。
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自衛隊のトラックがズラリと駐車
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これまではあまり見かけなかった重機も |
<トンネル拡幅工事>
基地内をトンネルと掘割で横断する相模原市道新戸相武台線の拡幅工事は、トンネル部分の工事は完了していることをすでに確認していますが、掘割部分はほとんど拡幅されていません。そのため、いまだに歩行者と自転車だけの通行路となっています。
特に、相武台前駅側の基地外の部分は、マンションなどが建っており、工事が進められるような雰囲気ではありません。相模原市の話では設計変更も含めて検討中とのことのようです。
次回は今年秋を予定しています。ニュースの案内などを見てください。 (松本)
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トンネル部分の工事は完了している
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掘割部分はあまり変わっていないよう
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