講演要旨
<北沢前防衛相について>
野田政権が発足し、新防衛大臣に一川保夫氏が就任した。防衛省の誰も知らない人物だが、北沢前防衛相も2年前の就任時はそうだった。
北沢前防衛相についての防衛省内の評価は高い。官僚のいうことを聞いてくれる。つまり、いいなりであった。主導権を発揮してこなかった等。
しかし、今年6月になり菅首相の引退がはっきりしてからリーダーシップを発揮した。震災対応で評判がよく、自信を持ったのか、2年間の総括として、@災害対策に注力、A馬毛島へのFCLP訓練施設検討、Bオスプレイ配備容認の3点の懸案事項について最後に提起した。
<震災後の米軍・自衛隊の対応について>
世間一般の評判は「よくやった」というものであるが、必要以上に評価する必要はないと考える。
(米軍)
たとえば、海兵隊による仙台空港の復旧活動についてみると、米軍の第353特殊部隊がパラシュート降下したのはそうだが、滑走路のガレキ除去は、最初に地元のゼネコンが行った。民間にできることを米軍がやっているともいえる。松島の離島の救援や仙石線のガレキ除去なども同じである。新任の陸上幕僚長は、「自衛隊と米軍との活動のバランスを取ることに苦慮した」とも発言している。
韓国へ向かう途中の空母ドナルドレーガンが、予定を変更して日本へ急行した。空母には80機の航空機を搭載しているが、ヘリは少なく思うようには救助活動ができなかった。
--米軍の震災派遣には三つの理由が考えられる。
@日米軍の指揮機能の統合
1997年に日米新ガイドライン、1999年に周辺事態法などの関連法が制定された。この法律で日米共同調整所の設置が定められたが、今回初めて防衛省、横田基地、東北方面総監部に設置された。
ハワイの米太平洋軍から、米太平洋艦隊司令官ウォルシュ大将が横田に来た。この司令官が率いる常設の統合任務部隊519から200名が横田に来て、統合支援部隊が設置された。有事作戦での日米連携の試行ということが重視されている。
Aオバマのクリーンエネルギー政策
これには原子力発電所の建設推進も含まれる。福島第1原発はもともと米GEのタイプ、1号機は正真正銘のGE製である。この原子炉が安全だということを示す必要があった。また、米国人に被ばくさせてはいけないという理由など、オバマ政権の政策上、早期収束を図る必要があった。
B中国の国防費が増大
中国が空母を投入するなど軍事力を強化している。米にとっても脅威であり、友好国と連携して中国に対抗することを考えている。オーストラリア、日本、シンガポール、フィリピンなど。その中でも最も重要な国が日本、これが没落することを防ぐ必要がある。
--トモダチ作戦
トモダチ作戦の米予算は8000万ドル、約65億円である。一方で思いやり予算は、4月からの特別協定により、提供施設整備を含め毎年度1881億円を今後5年間にわたって保証、約1兆円に近い額である。
(自衛隊の災害派遣)
災害派遣に原子力災害も含まれるが、特別手当が支給された。福島原発に出動した隊員は4万2000円の出動手当、警察、消防(東京都職員)は5500円である。
自衛隊の空母型護衛艦ひゅうが(ヘリ搭載空母)は、自治体の災害対策本部として使える多目的室を備えているが使用されず。
<米軍再編について>
予定通り進んでいないところも多い。遅れが目立つ。
キャンプ座間への米第1軍団司令部は、予定に反して前方司令部の配備となった。一方で自衛隊の中央即応集団司令部の移駐は予定通り進められている。自衛官に聞いても移駐の意味がわからない。政治が決めたこととの認識である。
それでも米軍と自衛隊が同じ場所にいるという意味はあるので、将来的には、陸上総隊が編成され、米陸軍との連携が進むのではとの見方もでている。●
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